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2011年9月 6日

第13話 素数ゼミ

生存競争で生き残った生き物たち

素数表



ある生き物は、首を長くし、
ある生き物は、石のような硬い甲羅で身を守り、
ある生き物は、獲物を捕らえることができる鋭い牙を持ち、
この地球上で長い長い生存競争を勝ち抜き、現代まで
生き残りました。(図1)

そういった能力や特徴だけでなく、数字の力で生き抜くことができた
セミがいます。

北アメリカに生息する周期ゼミ─吉村仁教授が素数ゼミと名付けたそのセミの、
現代まで生命を繋いだ歴史には素数(図2)が大きく関係しています。

第9話でも、素数は他の数にはないフシギな力を持っていると書きましたが、
計算なんてできるわけないセミの生存競争に、素数が関係しているとは
どういうことでしょう。

(記事後半につづく...)

(※ クリックで画像拡大します。)
素数ゼミ_01

素数ゼミ_02
(※ クリックで画像拡大します。)

アブラゼミ、クマゼミ、ミンミンゼミ...など日本にいるセミは、
地中にいる幼虫期間が2~7年で、
毎年発生します。

一方、素数ゼミは
13年あるいは17年ごとに、
限られた地域で大量発生し、それ以外の年は発生しない
という
変な特徴を持っています。

どれほどの局地的大発生かというと、100m四方に40万匹ものセミが
発生するらしいです。
木の根元はセミの抜け殻がびっちりで、地面が見えなくなるほどです。

 ※GoogleやYouTubeで「素数ゼミ」「周期ゼミ」「magicicada」などと検索すると
 画像や映像が見られるのでご覧になりたい方はどうぞ。

 http://www.youtube.com/watch?v=xf7EpFD1a4U&feature=related
 ※虫嫌いな人は閲覧注意。


大昔、素数ゼミの祖先も普通のセミでした。
それがどうして不思議な特徴を持った素数ゼミとなったのか。

その原因は約180万年前に地球をおそった氷河期です。
当時、北アメリカのほぼ全土が文字通り氷に覆われてしまいました。
当然、いろんな生き物たちが息絶え、セミも例外ではなく絶滅の危機に直面しました。
しかし、そんな氷の世界にも部分的にあたたかい場所があったのです。
砂漠の中のオアシスのようなスポット...古生物学において「レフュージア」と呼ばれる場所です。

ただ、あたたかいと言っても、周囲は氷河です。さむいっす。
気温が低くなると、地中の養分も少なくなり、幼虫の成長スピードも遅くなります。
結果、北部のレフュージアでのセミは、地中期間が14~18年と
長いものになりました。

レフュージアにおいては、同じ気候条件下なので、幼虫が成虫になるまで
期間はだいたい同じになります。
そんな中、1年早く、あるいは1年遅く地上に出てきてしまったセミは、
交尾する相手もいません。
また、レフュージアから飛び出しても、やっぱり相手がいないので交尾が
できません。

こうして限られた場所で一斉にドバッと発生する奇妙な性質が
身につきました。
15年ゼミや、16年、17年、18年ゼミといった周期ゼミの誕生です。
これらのセミはほとんど似たようなセミですが、
体内の「幼虫期間タイマー」だけが異なるセミだと思って下さい。

氷河期を乗り越え、周期ゼミとなったセミたちですが、
ここから、素数の力で17年ゼミだけが生き残り
他のセミたちはいなくなってしまいます。

どうして「17」という数字がサバイバルの武器となったのか。
キーワードは「最小公倍数」です。

あるレフュージアに15年ゼミと18年ゼミがいたとします。

15と18の最小公倍数は90です。

つまり、15年ごとに地上に出てくる15年ゼミと、
18年ごとに地上に出てくる18年ゼミは、
90年ごとに地上で一緒になります。

そうして出会った15年ゼミと18年ゼミはほとんど同じセミなので、
交尾しちゃいます。(図3)


(※ クリックで画像拡大します。)

これは「交雑」ですから、その子どもたちは少し性質
が変わってしまします。
地上に出てくるタイミングがズレて、16年や17年になってしまうセミがうまれてしまいます。
そういう"ズレゼミ"は交尾する相手がいません。
(17年にズレたからといって、そこに17年ゼミがたくさいるわけではないですよ。ややこしいですが。)

つまり、他のセミと交雑することは、子孫を減らす結果に繋がります。

ここで他のセミと出会う組み合わせを見てみると(図4)、

(※ クリックで画像拡大します。)

17年ゼミが他のセミとと出会わずに済む確率が高いことがわかります。
これは素数が最小公倍数をグッと大きくする性質を持っているからです。

セミたちは交雑を繰り返すうちに数を減らし、
「素数17」というアドバンテージを持った17年ゼミだけが
最後まで生き抜いたということです。

以上、説明してきましたが、とてもざっくりしたものとなっていますので、
詳しくは『素数ゼミの謎』(吉村仁・著/文藝春秋)をご覧下さい。
とても面白くてわかりやすい良書です。



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